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2017/10/18 (Wed)
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「あれ!?棚村?何してるのよこんなところで」
岩本穐はその大きな両目を、さらに見開いて俺を見た。心底意外そうな顔を見せたあとに、面倒臭げに短く息を吐く。「こんなところ」とは、学校から6キロほど離れた温泉街の道端だった。ここには笑乃助の家があるのだが、俺の方から遊びに行く習慣が無い事は岩本も知っている。
「よお、こいつの散歩だよ」
視線を足元に移した。俺の右手から伸びたリードの先には、丸々とした大きな犬が伏せている。主人の足が止まったのを良いことに休憩に入ったのだろう。口の端からはだらしなくよだれがたれ落ちている。ブルドッグの口の構造上仕方の無い事だが。
「あんたの家、犬飼ってたんだ。それにしても随分と遠出したわね、隣町でしょ、ここ」
学校から6キロ、家からは7キロも離れたこの場所に、犬の散歩としては無理があるし、この質問は当然来るだろうと思っていたので、事前に用意していた理由を返事に付け足した。
「こいつ最近太ってきたからな、ダイエットだよ。お前は?」
靴先で、寝そべった犬のわき腹をつま先で突付きつつ、別に聞かなくとも知っているのだが、自然な流れとして尋ねておく。
「私は…部活よ」
少し躊躇いがちに言った岩本は、天体望遠鏡の入ったケースと、三脚やらが上から飛び出したナップザックを背負っている。天体観測は岩本の前からの趣味だが、彼女はそのことを積極的に人に話そうとはしない。学校での活発なイメージとギャップがあると思っているらしく、返事に躊躇があったのもそのためだろう。なにを趣味にしていても、自分が好きなら物怖じする事は無いだろう、といつも思うのだが、それを俺の口から岩本に言った事は無い。
「こんな時間からか?」
空を見上げると、まだ正午も回っていない、朝方というにも遠い午前11時半の太陽が、まばゆく光っている。快晴ではあるが、星は見えない。当たり前だ。
「場所探しよ、こっちの方は街灯少ないし、日が落ちる前にいい所無いか見に来たの。…ってかさ」
音を立てながら背中の荷物を背負いなおすと腕を組んでにらみつける。
「こんな時間からアンタも何やってんの。しかも休みの日に、こんな早起きして」
用意していた俺の登場理由では、まだ納得がいかないらしい。
「な、凄い偶然だよなあ」
全く偶然ではありはしないのに、そんな返事をしてみる。
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2008/11/06 (Thu) OCH Trackback(0) Comment(5)
och-p-071.jpg 休日の過ごし方も随分と変わったものだ。
 笑乃助は布団から上半身を起こした状態で、眠気を覚ましていた。
ほんの数週間前までは、休日といったら昼まで寝て、特に面白くもないテレビ番組を見て、だらだらと時間をつぶすか。あるいは、棚村や岩本とボーリング場かゲームセンターで、だらだらと時間をつぶすかの二つに一つだったというのに。
 今となっては早起きを強いられて、休日ですら惰眠を貪ることも出来ないでいる。
 昨朝などは通常よりも、あまりに早い登校に、叔母である春子にすら、訝しがられた。何かが起こる前にきちんと目を覚ましておけと、ノイズサーファーに無理やり起こされたのだ。
 そのおかげで昨日は、前方不注意だった車同士の衝突を防ぐ事が出来た。人命こそ大事だとは思っているが、未だこの理不尽な目覚めに、素直に納得できるほど、笑乃助は達観していない。
 そんな日々が続くようになって、笑乃助はいつの間にか休日すらも、こうして早くに目が覚めるようになってしまっていた。今朝も誰かに起こされたというわけでもない。自主的に起きれるようになったのは自立の一歩に違いなかろうが、残念ながらそれを喜ぶほど単純でもない。
 こう早く起きても、ノイズが入らなければやる事も無い。かといってまた寝てしまうのも気が引ける。どうやってこれからの時間を過ごそうかと考えていたところに、妙な気配に気がついた。
 家の者とは違う妙な気配を感じる。ヒーローになってから最も嫌な事は、人の気配に敏感になった事だ。バッチをはずしていても、常に警戒しているかのようで、いまいち心が休まらない。
 家の中に4人目の気配がある。
はじめのうちは近所の人が来ているのかとも思ったが、なにやら獣臭く、どこか気配を消そうとしているような「もや」がかった感覚がある。
「……誰だ?」
 嫌な予感がした。ヒーローとして活躍しなければならない事態が、身内に起こるのではないか。漠然とした不安を抱えたまま、笑乃助は階段を降りる。
2008/04/04 (Fri) OCH Trackback(0) Comment(6)
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