休日の過ごし方も随分と変わったものだ。
笑乃助は布団から上半身を起こした状態で、眠気を覚ましていた。
ほんの数週間前までは、休日といったら昼まで寝て、特に面白くもないテレビ番組を見て、だらだらと時間をつぶすか。あるいは、棚村や岩本とボーリング場かゲームセンターで、だらだらと時間をつぶすかの二つに一つだったというのに。
今となっては早起きを強いられて、休日ですら惰眠を貪ることも出来ないでいる。
昨朝などは通常よりも、あまりに早い登校に、叔母である春子にすら、訝しがられた。何かが起こる前にきちんと目を覚ましておけと、ノイズサーファーに無理やり起こされたのだ。
そのおかげで昨日は、前方不注意だった車同士の衝突を防ぐ事が出来た。人命こそ大事だとは思っているが、未だこの理不尽な目覚めに、素直に納得できるほど、笑乃助は達観していない。
そんな日々が続くようになって、笑乃助はいつの間にか休日すらも、こうして早くに目が覚めるようになってしまっていた。今朝も誰かに起こされたというわけでもない。自主的に起きれるようになったのは自立の一歩に違いなかろうが、残念ながらそれを喜ぶほど単純でもない。
こう早く起きても、ノイズが入らなければやる事も無い。かといってまた寝てしまうのも気が引ける。どうやってこれからの時間を過ごそうかと考えていたところに、妙な気配に気がついた。
家の者とは違う妙な気配を感じる。ヒーローになってから最も嫌な事は、人の気配に敏感になった事だ。バッチをはずしていても、常に警戒しているかのようで、いまいち心が休まらない。
家の中に4人目の気配がある。
はじめのうちは近所の人が来ているのかとも思ったが、なにやら獣臭く、どこか気配を消そうとしているような「もや」がかった感覚がある。
「……誰だ?」
嫌な予感がした。ヒーローとして活躍しなければならない事態が、身内に起こるのではないか。漠然とした不安を抱えたまま、笑乃助は階段を降りる。
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